相続した財産はどう使う、使い道と分割前の状態

相続財産の使い道

相続した財産は基本的にはその相続人個人の財産です。
夫婦間の共有財産にもなりません。
ですので、使い道に関しても自由です。
しかし親が一生懸命に築き上げた財産ですのでなるべき大事に使いたいと思うのは自然なことだと思います。
使い道として大きな選択は今使うか・老後の生活資金に使うかです。

相続財産の使い道例

○生活費に組み込む
○ずっとやりたかった事をやらしてもらう
○ほしかったものを買わせていただく
○住宅や車のローン返済に使わしてもらう
○子どもの教育資金に充てさせてもらう
老後の生活資金に使う場合の現在行動
○定期預金に預けておく
○保険商品を買う
○投資などの運用
代表的な使い道としてはこれらのものがあげられるかと思います。
幾つかについて補足しておきますと

定期預金・保険商品について

定期預金の金利は現在とても低くなっています。
保険商品は種類がいろいろあり、一括でいくらかの保険料を納め、年金として受け取る保険商品なら同じ額を使っても定期預金より利率がいいという特徴があります。
住宅ローンについて
相続財産の運用(保険など)をお考えなら、金利が安い場合には。不動産ローンの一括返済は損をするかもしれません。
団信などもありますので借りておいて他で運用していった方が得な場合もあります。

以下に不動産の運用の一つ賃貸についてみていきます。相続登記に期限はありませんが、賃料などが発生している運用不動産の場合は注意点があります。

コラム 遺産分割前の賃貸不動産から生まれる賃料は誰のものになるか?

相続財産の中に賃貸不動産があった場合、それを遺言書に従って、または遺産分割協議により決定してだれが相続するか決定します。
基本的に遺言書が無い場合は、遺産分割協議により決定する事になるのですが、遺産分割協議を49日過ぎから始めた場合や協議自体が長引いている場合、その間にも借主さんから賃料が入ってきます。

遺産分割が行われるまでの相続財産は相続人全員で共有状態といことになりますので、そこから発生した賃料も相続人全員で共有となるのか?はたまた遺産分割の効力が相続発生時まで遡って発生するという決まりを使ってその賃貸不動産を相続した相続人が賃料もすべて相続するのか?

判例では以下の様になっています。

事例

被相続人の配偶者と子が相続人の場合において、賃貸不動産が共同相続状態になっており、その間の賃料に関しては不動産の帰属後に清算しようという事で賃料管理のための口座を開設した。
その後遺産分割がなされ当該賃貸不動産の帰属が確定したが、賃料管理用の口座にある2億円を巡っての争いが起こった。
この2億円を法定相続分により分割し合場合には配偶者の取り分は1億円となるのに対し、遺産分割により取得した賃貸不動産の賃料相当額とした場合は1.9億円となる。
そこでまず争いのない範囲で分割したのち配偶者は残りの9000万円に支払いを求めて訴訟を提議した。

なんだかややこしい話ですがつまり
遺産分割が行われるまでの相続財産は相続人全員で共有状態といことになりますので、そこから発生した賃料も相続人全員で共有となるのか?こちらが正しいとされた場合は、法定相続分により分割し合場合には配偶者の取り分は1億円
遺産分割の効力が相続発生時まで遡って発生するという決まりを使ってその賃貸不動産を相続した相続人が賃料もすべて相続するのか?こちらが正しいとされた場合は、遺産分割により取得した賃貸不動産の賃料相当額とした場合は1.9億円 という話です。

裁判所の見解は以下のようになっています。

遺産は、相続人が数人ある場合には相続開始から遺産分割の間は共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。
遺産分割は相続開始時に遡ってその効果を生じるものではあるが各共同相続人が分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。

結果としてこの裁判判例では、遺産分割が行われるまでの相続財産は相続人全員で共有状態といことになりますので、そこから発生した賃料も相続人全員で共有となるのか?こちらが正しいとされました。
その理由は、賃料債権は賃貸不動産とは別の相続財産で遺産分割よりも前に各相続人が既に確定的に取得していると考えられるためです。

この様に被地が亡くなった場合、すぐに相続手続きを行うわけではないので相続にはさまざまな注意点があります。

次に分割前に相続財産が無くなった場合を見てみましょう。

相続対象の財産はいつの時点のものか

相続の発生から遺産分割までの間に、相続財産が存在しなくなってしまった場合遺産分割の対象になるのは相続発生時に存在していた財産なのか遺産分割時に存在している財産なのかを見ていきましょう。

前者、相続発生時に存在していた財産をたとえ遺産分割時に存在していなくても分割の対象にする=相続開開始時説、この説に基づく判例も少数あります。
後者、遺産分割時に存在していた財産を分割の対象にする=遺産分割時説

後者、遺産分割時説が現在の定説です。

そもそも相続開始時から遺産分割の間に長期間を費やす事になった場、遺産である相続財産に変動を生じる事態とはどんなものなのか?

例えば遺産である不動産から賃料が得られるような場合、あまりないことですが火災などで不動産が焼失し、火災保険の請求権が発生するなどなどが考えられます。

このような個々の事例に関しては判例でみても争いがあるのが現状です。
すこし詳細は省きますが判例をご紹介します。

昭和38年京都家審
遺産である不動産が国に売却された場合の売却代金及び利息は分割の対象となる。

昭和39年東京高決
相続財産に属する株式を相続人が遺産分割前に勝手に処分した場合、その株式に代わり、同人に対する代償請求権が分割の対象となる。

このように法律のみならず何例に関しても争いがある事項今回でいうと遺産分割時説と相続発生時説が少なからず対立して存在している場合、実際の相続手続き、遺産分割協議においてこの論点で争いが発生すると調停・審判と激化していく可能性が考えられます。

遺産分割の基本は相続人同士が話し合って全員が納得する事です。
相続発生時説や遺産分割時説を持ち出すよりも相続人同士が良く検討し納得することが大切です。
それでも決めきれない場合は相続人みんなで共通した知識を持ちましょう。

法的にどうこうというよりも、仲良く遺産分割協議を終えるためのコツです。

昭和52年 最判

共同相続人が全員の合意によって遺産分割前に遺産を構成する特定不動産を第三者に売却したときは、その不動産は遺産分割の対象から逸出し、各相続人は第三者に対して持分に応じた代金債権を取得しこれを個々に請求することができる

昭和54年 最判

共同相続人が全員の合意によって遺産分割前に遺産を構成する特定不動産を第三者に売却したときにおける代金債権は特別の事情がない限り、相続財産に属さない分割債権であり各共同相続人がその持分に応じて個々にこれを分割取得するものである