相続手続きの流れを解説。わかる!もめない相続手続きのポイント

相続手続きの5つの流れ

人が死亡すると相続が発生します。

相続とは、亡くなった人が持っていた財産、権利などのプラスの資産や負債などのマイナスの資産を権利のある方が引継いでいく制度です。

相続は、どのように始まりどのように終わるのでしょうか。

本記事ではその流れとポイントを確認していきます。

相続の流れ 1 相続の始まり

相続は人が亡くなると発生し以下の様な流れが発生します。

  1. 始まり
  2. 相続人とその権利の確認
  3. 相続財産の把握
  4. 分け方の決定
  5. 相続手続き

よく、「我が家には相続なんて関係ない」というお話も聞きますが、「死亡」は誰しも避けることができない道ですので厳密には相続が発生しない人はいません。

ただ、亡くなった方名義の財産や負債が何もない場合は相続するものが無いという事はありえるかもしれません。

少し余談になりますが、相続は亡くなった方の資産を権利のあるものが引継ぐ制度ですので、生きている方の資産を誰かが引継いだ場合は贈与という扱いになります。

1~5の流れを順番に確認していきましょう。

相続の流れ 2 誰がどのくらい相続する権利のあるものか

相続が始まったら、まず亡くなった方の財産を相続するのはだれか、誰に相続する権利があるかを把握する必要があります。

誰が相続する権利がある人かの答えは民法にあります。

相続手続き 誰が相続人か

 

 

 

 

 

 

この図のように亡くなった方から見て、配偶者(妻や夫)は常に相続人となります。 これは戸籍上の妻や夫を指しますので、所謂内縁関係の場合相続人にはなれません。

次に子がいる場合は子が相続人になります。

子は第一順位と定められていますので、子がいる場合はそれより下の順位のものは相続人にはなれません。

第二順位の本人から見た父や母、第三順位の本人から兄弟姉妹が相続人になるのは子がいない場合という事になります。

例えば子と兄弟姉妹が相続人となるという事はありませんが配偶者はいるけど子はいないという場合は配偶者と親、配偶者と兄弟姉妹などが相続人となります。

法定相続人の8パターン

配偶者がいる場合
1. 配偶者 + 第1順位者(子 OR 代襲相続した孫)
2. 配偶者 + 第2順位者(父母 OR 祖父母)
3. 配偶者 + 第3順位者(兄弟姉妹 OR 代襲相続した甥・姪)
4. 配偶者

配偶者がいない場合
5. 第1順位者(子 OR 代襲相続した孫)
6. 第2順位者(父母 OR 祖父母)
7. 第3順位者(兄弟姉妹 OR 代襲相続した甥・姪) 
8. 法定相続人がいない

つぎにどのくらい相続する権利がるのかを見てみましょう。

配偶者がいる場合 ※     が相続する権利の数字です。
1. 配偶者(二分の一) + 第1順位者(二分の一)(子 OR 代襲相続した孫)
2. 配偶者(三分の二) + 第2順位者(三分の一)(父母 OR 祖父母)
3. 配偶者(四分の三)+ 第3順位者(四分の一)(兄弟姉妹 OR 代襲相続した甥・姪)
4. 配偶者(全部)

配偶者がいない場合
5. 第1順位者(全部)(子 OR 代襲相続した孫)
6. 第2順位者(全部)(父母 OR 祖父母)
7. 第3順位者(全部)(兄弟姉妹 OR 代襲相続した甥・姪) 
8. 法定相続人がいない

同順位のものが複数いる場合は、その順位の持分を平等に分ける形になります。

パターン1の場合に子が2名の場合二分の一を2名で割って4分の一ずつになります。

相続の流れ 3 相続財産の確認

相続する事ができる財産も確認しておく必要があります。

亡くなった方名義の金融資産(普通預金、定期預金、株、投資信託など)や不動産(土地、建物)などプラスの資産と借金などのマイナスの資産しっかり確認し財産目録にまとめましょう。

マイナスの資産がプラスの資産を上回る時などは相続放棄などを検討することになりますし、相続税の基礎控除(3000万円+法定相続人の人数×600万円)を超える額の資産があれば相続税の申告準備をする必要があります。

相続の流れ 4 分け方の決定

誰がどのくらい相続する権利をもっていて、相続財産がこのくらいと把握できたら次はいよいよ分け方を決定します。

亡くなった方が遺言書で分け方を指定している場合もありますが、遺言書が無い場合は権利のある人全員で協議を行い分け方を決めていきます。

この際権利のある人が一人でもかけている協議は無効になります。

この協議で決定した分け方は遺産分割協議書を作成してまとめておくと良いでしょう。

相続の流れ 5 相続手続きを行う

分け方が決定したら財産を管理している機関に対して相続手続きを行います。

金融資産なら、銀行や証券会社へ対して相続手続きを行う事になりますし、不動産の場合は法務局へ対して相続手続きを行う事になります。

相続税の納税が必要であれば税務署へという形です。

それぞれの機関へ相続人が決定した分け方を証明するためにも遺産分割協議書は有効です。

またまた余談ですが、よく相続手続きを行わずカードなどで普通預金をすべておろしてしまうかたがいます。

定期預金の解約はまず無理ですが普通預貯金ならこの方法でお金を引き出すことも可能な場合はほとんどです。

ですが、この方法は相続人同士でもめる可能性があるならやめておくべきです。

相続人であればここに銀行の取引履歴を調べることができますので、亡くなった後におろされたり、亡くなる直前におろされたりしている預貯金、大きな不信感を生むことになります。

以上の5つの流れを経て然るべき人が亡くなった方の資産を引き継いだ時に相続は完了します。

ポイント 相続手続きをスムーズに行うことが相続には大切です

相続はもめるという印象をお持ちの方も、我が家の相続は大丈夫とお思いの方もおられるとおもいますが、どちらの場合でも相続においてもっとももめごとが起きやすポイントは「相続の流れ4」遺産分割協議時、つまり遺産の分け方を話し合う段階です。

しかしこのもっとももめやすいポイントをクリアしても油断は禁物、今回は分け方が決まった後の注意点をお話ししたいと思います。

さて、被相続人が亡くなってなんとか相続財産の分け方も決まりました。
後は相続手続きを終えるだけといったところで燻っていたケンカの火種が大炎上してしまうケースが多々あります。

燻り続ける、相続手続きケンカの火種

  • 「相続財産を完全に平等に分ける事が不可能」
  • 「亡くなった人との関係性の違い」
  • 「身近で遠い人同士なので遠慮も信用もない」
  • 「相続人や相続財産、法定相続分や遺留分などの相続の知識がない」

遺産分割において相続人全員が大満足のケースもないことはありませんが、そうでないケースも多いです。遺産分割協議の時点では、なんとか自分自身を抑えて分割案に納得した相続人がいたとしたらちょっとしたきっかけで相続手続きに手間取り、手続き自体に時間がかかったり何度も印鑑証明や戸籍類の郵送を要求したりすると上記のような火種が再燃して相続争いが生まれてしまうかもしれません。

次から相続手続きにおけるもめごとの火種を一つずつ見ていきましょう。

相続争いの火種とは

火種「相続財産を完全に平等に分ける事が不可能」 再燃炎上

不動産を相続しない代わりにお金をもらう事で同意したけど冷静に考えたらこれって妥当な金額?損してない?

火種「亡くなった人との関係性の違い」 再燃炎上

同居をしていた兄へ全部相続させるという事で、あの時は納得したけど私達だってできる範囲で介護に協力してきたはず、もやもやするなぁ

火種「身近で遠い人同士なので遠慮も信用もない」 再燃炎上

あの人が提示してきた財産目録、正しかったのかな、先にお金を引き出したりしていたんじゃないかな

火種「相続人や相続財産、法定相続分や遺留分などの相続の知識がない」 再燃炎上

あいつが受け取った生命保険も分けるべき
遺留分を侵害されているのに気が付いてなかった
えっあの子も相続人だったの

などなどです。

相続手続きに関して、疑念や不満が再燃した相続人がとる行動は・・・・・・・・・・・

相続手続きに協力しない、押印拒否や書類提出拒否

協議のやり直しを要求など様々ですが、とても困った事態になることは確実です。

相続手続きにおいては

事前準備=じっくり理論だてした、遺産分割案の説明=火種を無くすこと

計画的な相続手続き計画でスムーズに相続手続きを行う=何度も押印や書類提出などの協力要請をしない=再燃のきっかけも減らす事がとても大切です。

それは遺言書がある場合も同じです。

スムーズな遺産相続手続きのポイント

ポイント1 遺産分割協議

共同相続人は遺言により遺産の分割を禁じられた場合を除いていつでもその協議により遺産分割をすることができます。遺産分割協議は共同相続人全員で行わなければならず一部の者だけで行った遺産分割協議は無効です。

また基本的には共同相続人以外の人物は参加する権利がありません。

たとえば法定相続人である長男の妻や、法定相続人である長女の法学部に通っている子などは参加する権利がありません。

権利がない人が参加するともめる要因になり得ますので注意しましょう。

また遺産分割協議を行うときにはあらかじめ、金融機関で亡くなられて方名義の口座の残高証明書や不動産の登記簿謄本、不動産の価値の目安として固定資産税の評価額証明書などを取得し遺産目録としてまとめておきましょう。そして遺産分割協議を有効に成立させ決定した内容を遺産分割協議書にまとめておきましょう。

ポイント2 実印

相続財産を名義変更等の相続手続きの際に使用する遺産分割協議書には実印を押印し印鑑証明書を添付する必要があります。

あとあと何度もやり取りしなくていいように、相続人は金融機関用・登記用など相続財産に合わせて、数通の印鑑証明書の取得をあらかじめお願いしておくおと良いでしょう。

ポイント3 書類集め

相続手続きの際には亡くなった方の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本をあつめ法定相続人を特定します。

さらに法定相続人の戸籍謄本でその法定相続人が現在も健在である旨を証明します。

もめない相続手続きまとめ

様々なポイントをしっかり把握し、必要書類を検討ししっかり関係者へ伝え提出してもらう事で何度も役所へ行ってもらうストレスをなくし、財産目録を作成することで遺産に関する疑義をなくし、戸籍などで遺産分割協議に参加する権利のある人を特定して話し合う事でもめない相続手続きの第一歩になります。